今回は、いつもよりモノローグ要素が多めです。
「駐在員っていったいなんだろう?」これは、私の駐在期間を通して、いつも私の頭の片隅にあったテーマです。
その疑問に至った経緯と、その後について、
駐在決定以降の、私自身の心象変化とともにご紹介します。
赴任直前・直後の心境
自分に価値がある気がした
時系列的には、辞令をもらった直後になります。
これはもう明け透けに言ってしまいますが、
「辞令をもらって普通に嬉しかった」です。
辞令をもらうことで、今まで本社でやってきた仕事が、「コイツだったら、送ってもいいだろうという」という評価につながった、確たる証拠が得られたように感じました。(実態はどうかはわかりませんが^^; )
駐在員の派遣には、もちろんながら多大なコストがかかります。
ですので、市場価値のリアルな「金銭」面からしても、自分がそれに見合う価値アリと評価された……という実感も、嬉しさを後押ししました。
今思い起こすと、なんだか恥ずかしいような気もしますが、要するに、
「なんか浮かれちゃってる」
状態でした。
新しい環境にワクワクしていた
駐在が決まって以来、なんとなく、海外勤務=ステータスの様な気がして、いいかんじと思っていました。
これから仕事・プライベートで過ごすことになる……ということで、メルボルンについて検索しまくりました。
「世界住みたい街No.1」とか、「おしゃれなカフェがたくさん!」とか、「美しい公園がたくさんある」など……
ワクワク度合いは止まりません。
また、言語の面でも、英語は日常的にプライベートで使っていたので不安はなく、英語に問題がないとタカをくくっていました。
ですので、リアルビジネス英語については、
「すぐ慣れるでしょ。なんとかなるなる。」
といったように考えており、そういった所をあまりシリアスに考えることもなく、
やはりこの時期は、なんとなくワクワク感が勝っていた状態でした。
(後々、むちゃくちゃ甘かった(※リンク)ことに気づきます。)
赴任直後の心境
そしてライフスタイル重視派の私は、赴任直後の心境はこんな感じでした。
「す、すごい、オフィス超おしゃれ!ガラス張り!」
「オフィスにコーヒーマシーンやキッチンスペースがある!」
「個室与えてくれるんですか?!」
「なんか豪華なマンションに入居してしまった。プール付き!」
といったように、文字にしてみると、なんだか微妙ですが、当時の私が感じたことを素直に列挙してみたつもりです……
さて、仕事の方はと言いますと、最初の1か月は、各所への挨拶まわりや、現状説明を受けたりといった、仕事に臨む前段階・準備的なものが主でした。
心境としては
「これから業務で活用する新しい知識に触れて、楽しい」
というのが率直な思いでした。
英語的にも、1対1で丁寧に説明を受けるケースが多く、特に障壁を感じることはありませんでした。
赴任後やがて発生する疑念たち
駐在員の存在意義への疑念発生(第一次 )
やがて赴任後1か月が経ち、
その給料に改めて驚くことに。
「なんだこの額は……そんなに凄い事してたのだろうか。いや、これからする事になるのか……?」
この1か月、ディーラーをまわって挨拶をしているだけで、私は新しい何かをもたらしたワケではありませんでした。正当な対価を得ているのかどうか、疑問に感じたのです。
そこで、現地社長・部長・現地スタッフに質問をしました。
「私に期待してることは何か、率直に教えてほしい」と。
返答は以下のようなものでした。
社長:「現法が本社からどうみられるかが非常に大切」
部長:「現地スタッフからの評判考えると ミスはしないほうがいい」
現地スタッフ:「今までの感じでよい。在庫を適切に管理してまわしてほしい」
と、三者三様、それぞれ違う観点からアドバイスをいただきました。
ここで、なんとなく納得したような気分になり、一旦は疑念はおさまりました。
2か月目は、
もう前任者も帰国してしまいましたので、
「とにかく一人で仕事を回すこと」
に集中し、できる限りのアウトプットに専念しました。
仕事ぶりはどうかと言いますと、前任者(帰国してしまった先輩)に質問したり、現地スタッフに聞きながら、なんとか進めていました。
恥ずかしながら時折、ミスを起こしてしまっていたのですが、それでも、みなさんPoliteな方々なので、そこまでギスギスせずに辛抱強く共に歩んでくれました。
申し訳なかったと思います。
ということで、「ミスをしてしまう事もあったけど…… 順風なかんじ」といったものでした。
それから3か月が経ち、
いわゆる新人・お客様的な期間も終わり、社長からも怒られ、ようやく自分の甘さを認識し意識改革・行動改革にあたっていきます。
(自分の甘さ・社長に怒られたエピソードについてはコチラの記事です)
このころから、議論入り乱れるネイティブ仕様の会議に積極的に参加できるよう、英語を磨き始めました。(ただ、この頃はめちゃくちゃ効率の悪いことをやっていました・・・。)
また、業務に関するミスも大方無くなり、ここで現地スタッフから私への「駐在員に対する期待・要求」が、ようやっと顔を見せはじめた時期でもありました。
現地スタッフが抱える、本社への不安・不満についての相談を度々受けるようになったのです。
こういった相談に対して用意できる回答は、なかなか杓子定規にとはいきません。
バランスをとった合理的説明を尽くす。それに伴う、いわゆる「サジ加減」の調整についてもだんだん意識することになります。
駐在員の存在意義への疑念発生(第二次 )
そして半年ほどが経ち、
駐在員っぽいことが一通りソツなく出来るようになってきました。
この時期に再度、駐在員の存在意義について疑いを感じることになります。
半年間が過ぎ、自らの業務をふりかえってみると、
自分がいわゆる「連絡窓口」に過ぎない事を改めて認識したのです。
もちろん、駐在員の
「本国で蓄積された知識・ノウハウの移転」「本社の経営方針・規範の浸透」「現地法人・本社の調整と連携」「本社による現地法人の統制」(つまりは調整役・パイプ役)といった役割を否定するものではありませんが……
この半年を振りかえり、調整役に終止することなく、より現地法人に貢献する仕事をしていきたいという思いが、強く自分のなかに芽生えました。
この時期から、仕事の価値を追求しつつ、英語もより「効率よく」磨いていくよう努めることになります。
「調整役に終止せず、なにか爪痕を残したい。」
こういった思いを、以降の駐在生活で持っていく事になります。
そのような疑念を持ち続けた結果
色々な新しい事柄にチャレンジするように
駐在生活も一年が経ち、
ネイティブ仕様の英語会議もついていけるようになりました。
そして、とにかく爪痕を残そうというテーマは半年前から変わっていません。
そこに向けた具体的な行動としては、
「共有フォルダの合理的活用推進」
「定型作業マクロ化の洗練・進化」
「ディーラーへの詳細なヒアリング」
「会社内フットサルチーム結成」
といった、今までと違う角度からのコミュニケーションの推進や、生産性向上のさらなる推進を目指していきました。
特にディーラーとの関係においては、従来より一層、親密で建設的な意見を交わすことを目指した結果、現地法人との良好な関係を進展させたと思います。
以上のみならず、その期間を通して、課題の発掘・合理的なソリューションを積極的に求める駐在生活であったと思います。
駐在生活を振り返ってみると
その存在意義について悩むのが、駐在員だと思います。
今回、赴任後1年までの心境を簡潔にまとめましたが、実はその存在意義についてはその後4年間、駐在期間中ずっと考え続けながら過ごしてきたように思います。この後も色々悩むのですが、それは今後また記事にしていきたいと思います。
結果、私は駐在員の存在意義についての万人が納得する答えは、明確に出す事はできませんでした。
しかしながら、確かな大枠からは明確に答える事ができます。
「現地法人が、極論、駐在員が居なくてもまわっていくぐらいの組織になるよう、貢献すること」
ではないかと思います。
また、問題意識を持ち、コミュニケーション・生産性・英語といった各要素の向上に務めたことが、自らの市場価値の向上のみならず、現地法人へ貢献にも少なからず繋がったのではないかと信じています。
もしも、日常業務に忙殺・あるいは英語で一杯一杯な状況であったなら、どれほどの貢献が出来たか疑わしいです。
きっとそれだけで私の駐在は過ぎ去ってしまっていたのではないかと思います。
今日は以上です。
ありがとうございました!