駐在員が使う「丁寧な英語」と、「交渉時のニュアンス」

本社との調整・現地市場調査・ディーラーとの価格交渉・・・

ディーラーと交渉するマルクス君・・・の図に見えますが、この時の電話は実は彼女とでした。笑

 

駐在員の業務は、なにかと各所にお願い事や交渉が必要な案件が多く発生します。その際、ビジネスをスムーズに進めるためにも、丁寧な表現のニュアンスを理解し、相手に与える印象を良好なものにするよう努めなければいけません。

 

また、交渉時においては、丁寧表現の中に潜んでいる「押しの強さ」のニュアンスを理解して使い分けた方が、お互いにとって有意義な交渉が進展するはずです。

 

今日は、上記をテーマに挙げてみたいと思います。

 

駐在員の使う丁寧な英語

 

英文メールでも、日本語同様の細やかなニュアンスは重要か?


普段日本語、ビジネスメールを作成するときは、当然、言葉選びに細心の注意を払いますよね。

特にお願いごとに関する内容なら、決して横柄にとられないよう、なおかつ、協力をいただけるように、慎重に丁寧に表現を選ぶと思います。

では、英語ではどうでしょうか。

英語だから、ストレート敬語や丁寧語は意識しなくてもOK!

 

・・・ということでは決してなく

 

英語でも日本語同様に、些細な言葉選びの違いが、相手に与えるニュアンスに大きな差をもたらします。

 

そう、言葉選びは、日本と同じく重要なのです。


さらに、オーストラリアは「人格者である」ということに、とてもシビアな評価がされる国ですので(前記事参照)、メールにおいてもPoliteであるよう努めなければいけません。

メルボルンでも有名なワイナリー、Moet Chandon。ワインをたしなむ豪州紳士たるもの、礼儀をわきまえるべし・・・!

 

むしろメールのほうが、表情や話し方が伝わらない分、ニュアンスに繊細な意識を向ける必要があると思います。

 

ニュアンス習得に近道無し


あなたの部下が、書類を持ってきました。ざっと見ると、気になる点が。

 

(このフォント、強調したいから太字の方がいいんだよなぁ。前も言ったんだけどなぁ・・・。)

 

さて、そんな時にはこんな言い方が考えられます。

 

A. Can you make this font bold, please?

B. Can you please make this font bold?

 

上記2つの表現では、相手に与えるニュアンスが異なって伝わる可能性があります。

 

Aは、「お願いだから、このフォントを太字にしてくれる??(前も言ったけど!)」という、少し含みがあるニュアンスに捉えらえれる可能性があります。

Bは、「お願いなんだけど、このフォントを太字にしてくれる?」という、どちらかと言えばマイルドな感じになることが多いです。(もちろん言い方によりますが。)

 

何故、pleaseの位置一つで、こんなにニュアンスが違ってしまうのか。。。

一見理不尽のように思えますね。

ひぃー!どうしてー・・・!

 

それぞれの日本語訳を見ても、たった数文字ひらがなが違うだけで、だいぶニュアンスが変わりますよね。となると、私たちも無意識に繊細なことをしてるみたいです。

 

こういったニュアンスは結構奥が深いです。

 

これさえ知っていればOK!とかそういったものはありませんし、また、ちょっとした付け焼刃でなんとかなるものでもありません。

 

Webで表現をたくさん調べてみたり、本を購入したりと、ひたすら学ぶ姿勢、日々の精進が欠かせません。

 

よく使う丁寧表現とニュアンス


Webで表現をたくさん調べてみたり・・・ということで、私も探してみました。丁寧語という観点からかなりわかりやすくまとめているサイトだと思います。

お手数をかけ恐縮ですが、以下のリンクをご覧ください。

その英語、タメ口だけど大丈夫?英語の敬語・丁寧語表現を使いこなそう!

上記リンク記事は、丁寧さという観点からよくまとまっていると思います。

 

中ごろにある「 依頼の丁寧さのレベルは10段階もある?」に丁寧表現のニュアンスをレベルごとにランク付けしており、分かりやすいと思います。

 

この中で駐在という立場でよく使うのは⑥~⑨ぐらいでしょうか。私は、それらを状況に応じ使い分けていました。

 

⑥ Could you open the window?
「窓を開けていただけますでしょうか」

⑦ Could you possibly open the window?
「できましたら、窓を開けていただけますでしょうか」

⑧ I wonder if you could open the window.
「窓を開けていただけたらと思うのですが」

⑨ I was wondering if you could open the window.
「窓を開けていただけたらありがたく存じますが」

 

リンク先⑨の、より丁寧なバリエーションとして

I was wondering if you could consider checking the document again.
(大変お手数なのですが、もう一度書類をチェックすることをご検討していただけますか?)

や、さらに丁寧度レベルを高めた表現として

Sorry that I’m going to say something that may bother you but would you able to check the document again?
(少しややこしいことを言ってしまって申し訳ないんですけれども、もう一度書類をチェックしていただけますか。)

といった表現も考えられます。

肝心の要件に言及するまえに、前置きを付けたり、表現を遠回しにすることによって、丁寧にしていくといったイメージです。

 

ちなみに、文末にPleaseをつけるパターンは、ビジネス上はNGとなることがあるので要注意です!(窓を開ける程度の軽い内容ならOKですが)

 

先ほどの例、

Could you check the documents again, please?

だと、「頼むから、もう一度確認してくださいよ、いやマジで。」

というニュアンスとして捉えられかねません。

 

とにかくPleaseさえ使えば、あらゆる表現が丁寧になる。ということはでは決してない、ということを覚えておくと良いかと思います。

 

Pleaseが持つニュアンスは「丁寧に”〇〇してください”」ではなく「 お願いを強くする」要素も多分に含むからです。

 

とはいったものの、pleaseと併用する言葉、例えばWould you please や、Could you please といった位置に持ってくると、お願いを強調するというよりは、丁寧な響きとなることも、もちろんあります。しかし、その文に至るまでの前後関係や、お願いごとの内容(重要度)によっても印象は変わります。

 

Pleaseという言葉は案外奥が深いので、またの機会に記事にしようと思います。

Please gimme some food, please please please… 物欲しそうなガチョウは、メルボルンから車で90分、Daylesfordで見かけることができます。

 

ちなみに、意外なことに①の命令形は、ビジネスでも案外使える状況があります。

日本で、ビジネスで命令形を使うのはありえないですが、オーストラリアでは用いられる例が結構あります。

 

これはどういうことかと言いますと、日本はNoと言えないという前提がある文化なので、命令形は必然的に厳しい表現になる。

ですが、オーストリアはNoと言うことも前提とした文化なので、命令形が与えるトーンが日本ほどきつくない形で使うことができる。

 

ということが推察できます。

命令形での表現は、限定的な状況下になりますが、効果的に使える場合があります。

 

例えば、

 

I’m pretty sure you can do it. Respect your talent! Go get and grab the chance!

「あなたならできますよ!自分自身の才能にもっと自信をもってください。チャレンジして、機会をモノにしましょう!」

 

というような、日本語だと「~しましょう」と訳した方が適切な命令形等が考えられます。

ただし、ニュアンスの理解に不安を抱えている状況では、使用しないほうが無難です。

 

 

丁寧な表現やニュアンスを理解すること、なかなか易しいことではないですね。

 

さて、丁寧な表現とセットにして知っておくべきこと。それは「交渉英語における丁寧さ」です。

 

駐在員の交渉英語

 

押しの強さから丁寧表現を把握しなおす


駐在員の仕事は、交渉ごとを多分に含みます。

交渉は狙いすまして行うべし・・・!

 

交渉ごとにおいては、丁寧さに内在する「押し」の強さを理解する必要があります。

 

表現上の丁寧度が低いことと、要求の力強さ(押し)は、イコールではありません。しかし、概して、丁寧度が低くなるほど押しが強くなる傾向があります。

 

極端な例を出すと、

「Change the price.」(プライスを変えな。)

というのは、「丁寧ではなく」「押しは強い」です。これは、押しの強さをコントロールすることは難しいです。

一方、丁寧度合はコントロールすることが可能で、例えば「丁寧だけど」「押しは強く」しようと思うと、

 

「It is your responsibility to come up with the moderate price.」

(適正価格を考えてくるのは、あなたの責任ですよ。)

 

と言った文章等が考えられます。(丁寧で押しが強いと冷たい感じがビンビンします!)

 

交渉案件と丁寧表現


押しが強いとはいえ、微妙な交渉案件、例えば価格交渉の際に最初から

⑥「Could you change the price?」(⑥~⑨の中で最も丁寧度は低く、押しは高い)

と言えるでしょうか。最初から「価格を下げてください。」というトーンでは、日本語で考えてもちょっと難しいですね。

 

交渉の局面、前後関係、要求の内容から、押しの強さの表現(⑥~⑨)をそれぞれ変えていくことが重要となります。

 

最初は⑨の表現を使用し、

I was wondering if you could change the price.

や、そのバリエーション

I was wondering if you could consider changing the price.

といった丁寧度の高いトーンから入っていき、

交渉の感触や進展から、⑨→⑧→⑦→⑥といったように、ニュアンスを変化させていったほうが筋が良いと思います。

 

そう、特に⑥の表現は、商談がまとまりかけている局面で、価格交渉の大詰めとして使うことが多かったです。

 

相手が「できないことはないんだけど、うーーん。。」というような表情をしたとき、

 

Could you do that?(それでいけますか?)」といった押しの一撃が効果的でした。

 

交渉時がうまく行った時、自分へのご褒美、カプチーノ。ちなみに、メルボルンはコーヒー都市としても有名なんです。

 

 

まとめ

・日本語同様、英語でも言葉選びが非常に重要

・メールでの英語表現は特に意識

・丁寧表現の段階を知っておくこと

・交渉事では、丁寧を「押しの強さ」から把握し、局面により変化させること

 

 

いかがでしたでしょうか。

丁寧な表現というテーマでもなかなか奥が深いものです。私も日々精進していきたいと思います。

ではまた!


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