上司は基本的に名前で呼び捨て。上下関係ってあまりないの?

オーストラリアでは、マーク部長でさえ、部下から「ハーイ!マーク!」といったように名前で呼ばれます。とってもフランクで、フラット。上下関係の存在は悪いこととされる社会!

Hi Mark! ・・・ってやったらさすがに良い印象は与えませんね。^^;

 

 

・・・というわけではなく、実はかなりはっきりした上下関係が存在しています。

 

しかし、いわゆる日本でイメージされるような上下関係ではなく、

オーストラリア流の上下関係になりますので、根底にある考え方、ツボをおさえた理解をしていくことが大切になります。

今回は、それらについてご紹介いたします。

 

役割ベースで意識される上下関係

 

部下にとって、上司は全ての理を越え、まるで王侯貴族のような 偉い・尊い 存在として扱わなければならないという感覚は、基本的にありません。

上司は問答無用の絶対存在というわけではなく、上下関係の意識の中で根底にあるのは、会社においてどのような役割を担っているかという事実です。

 

例えば、これから推していく主力商品についての決定をし、お膳立てをしていくことが、上層部の役割だとすると、

 

部下は、基本的に上層部の意思決定に従っていくというのが、基本的なマインドセットです。

 

ただし、決して一方通行なものではなく、部下は、なぜこれが主力商品であるかについて、疑問があれば(表現方法に気を付けたうえで)率直に意見を言います。納得をしないと動かないこともあります。

 

このように、上司の指示といえども、一見不合理に見える内容だとすれば、納得をしないと動いてくれない方が、とても多いです。

 

 

 

納得できないことは、下から上に対しても、きちんと意見します。その逆もまたしかりです。

それがアカウンタビリティ。

 

オーストラリアには正論を大切にする文化があります。

合理的な説明をする能力が、仕事を円滑に進めて行く鍵になります。

 

きちんと積み上げていくためには、土台が大切。詰めて、積み立てて行くのです。

 

上下関係は、決して人間的な上下ではない

 

社内での上下関係は、役割分担に根ざすもので、決して人間的な上下や隷属関係を伴うものではありません。

もしここを履き違えてしまうと、上司自身が受ける評価は非常に危ういものとなります。

 

役割ベースの上下関係と、人間的な上下関係を混同してはいけません、

 

ここオーストラリアでは、人間としてのぞんざいな扱いは誰しも受けてはならないという価値観が、力強く根底にあるからです。

会社や仕事、それ以前に、誰に対しても礼儀正しく、Politeであることが、人間としての証である。

至極まっとうな事で恐縮ですが、いまいちど心に留めおいて良いかもしれません。

 

部下の扱いに関して、上司はシビアに評価される

オージーも、本音と建て前を使い分けながら上司をシビアにジャッジしているのです・・・。(彼女はオランダ人でしたが)

 

レディファーストならぬ、部下ファーストという文化。

基本的にオーストラリアでは上司が部下に気遣いをすることが求められています。

 

もし、課長職が平社員に人間的なぞんざいな扱いをしていようものならば、部長は課長に対し、不信感を間違いなく持つでしょう。

課長はリーダーとしての資質を疑われ、評価に影を落とすことになります。

ぞんざいな扱いを行ったほうが、人間として下に見られ、さらに仕事上の評価も下がります。

 

といったように、上司の部下に対する扱いは、非常にシビアに見られます。事実、上に立つ人間ほど、部下に対するしっかりとした心遣いができる人物である傾向が高かったです。

 

もちろん、日本においても少なからず同様ではある事柄かとは思いますが、この点については非常に明確に意識をしておくことを強く勧めます。

 

こんな背景があるので、もしあなたが駐在員として現地に赴くなら、絶対に気を付けておくべきことがひとつ。

 

部下に対して仕事を振る時は、細心の注意を払ってください。

 

例えば、レポートの形式が変わったとします。

 

ピアノ担当のF君に今までピアノの売上レポートを頼んでいましたが、本社からの通達でレポートに為替レートを書き加える必要が出てきたとします。そしてそれは今期全てのレポートに適応しなくてはいけないので、過去7か月分にそれらの情報を付け足す必要が出てきました。

 

日本であなたが上司ならこんな感じでしょう。

 

「F君、このレポートさ、為替レートも必要になったんだよね。で、今期分全部必要だから、やっといてくんない?」

 

こんな言い方をしたら、あなたの上司としての評価はだだ下がりになること請け合いです。

 

オーストラリアにおける礼儀はこうです。

1.まず、本社に変更が必要となった経緯を確認する

2.F君とミーティングをスケジューリングする

「F君、15分ほどのミーティングをしたいんだけど、いつが空いてる?2日後の14時?OK!」

(そして2日後)

3.結論→Because→質問を促す→結論ような説明をする

結論を先に言わないと、少しイライラされます。

「今回のミーティングの趣旨は、レポート形式の変更について。単刀直入に言うと、為替レートを、今期のレポート全てに書き加えて欲しいんだ。」

「理由は、本社の粗利改善。粗利を本社に集めたいという背景があるので、今までは部門別だったけど、今期から楽器別に為替レートを考慮した本社の実質粗利率を算出したいとのこと。

楽器別にすることにより、全商品のうちどの楽器を特に注意深く見る必要があるかの判断が非常にしやすくなる。・・・このロジックは分かるかな?」

「そんなわけで、為替レートの追記を、今期分のレポート以降お願いしたいんだけど、できるかな?」

 

4.実質業務量について言及する

「業務量としては毎レポート10分にも満たないと思うけど、来週提出分に関しては過去7か月分を全てやる必要があるから、今週に限ってF君には1時間程度の業務量が増えることになる。」

 

5.感情的なフォローアップをする

彼らからすれば「業務量が増えるのに、待遇が増えない」なんてことは基本的にありえません。

これも欧米の常識と心得ておくべきでしょう。役割を増やしたり、仕事を増やしたりするというのは、基本的に給与UPを保証しなくてはならないのです。

 

もちろん月1レポートに10分追加なので、そこまでの負担ではない・・・。

とはいえ、業務量の増加に違いありません。これには然るべき対価があって当然、と感じてしまうのが欧米風カルチャー。

なので・・・

 

「・・・という感じだけど、やってくれるかな?・・・サンキュー!今度ビール一杯奢るよ。」

 

と最後に言っておけばOKでしょう。

ビールを奢る時も「レポートの増加分ありがと!」と言うのをお忘れなく。

 

6.メールを打つ

 

契約主義の欧米社会では、必ず文章にして残しておきましょう。

「そんな話しましたっけ?」なんてしらばっくれられることがざらにあったりします。

(それか、本当に忘れている)

メールは2、3行でOK。

「先ほどのミーティング、時間ありがとう!今回お願いした点をまとめたから、確認してね~。

・2015年度以降の全ての売上レポートにおける為替レートの追記

以上、よろしく!」

 

いかがでしょう?

これをスムーズにできることが、上司としての理想的なふるまいあり、かつこれを平然とやってのける人がめっちゃいます。

 

・・・というより、それだけの器を持っているからこそ、上司になるのだ。サラリーも上がるし、責任ももっと持つことができるのだ。

 

という、ある意味まっとうな仕組みになっていると言えるでしょう。

 

上司に対する敬意の表し方。アカウンタビリティ!

 

一方で、もしあなたが部下だったら、どのように振舞うべきでしょうか?

 

基本的に、日本で求められる、一般的な上司に対する気遣いさえマスターしていれば、OKでしょう。

 

日本式の気遣いが、向こうでは過度なものと捉えられてしまうのではないか?

 

・・・という心配があるかもしれません。しかし、もしそう映ったとしても、基本的に問題とはならず、嫌な印象を与えることも無いでしょう。

 

ただし、一点注意するべき点があります。

 

それは「尊敬」の概念が、アングロサクソン系文化と日本文化では、若干の違いがある、ということです。(あくまで傾向ですが)

 

例えば上司から、自分にとって、嫌な事・不都合な何かを頼まれたとします。

 

日本では、「課長の言うことだから従いなさい」とうように、黙して従うことが、良いとされる事が多いようです。

隷従・従順が、上司に対する敬意と見られることが多々あります。

 

しかし、オーストラリアでは、きちんと自分の意見をもって、説明することが上司に対する敬意の表れとなるケースがほとんどです。

 

これを一般的に「Accountability」と言い、日本語では「説明責任」と訳されることが多いですが、要は社会を構成する一員として、「いっぱしのオトナなんだから、自分のことぐらいちゃんと表明しなさい」という責任が求められている、ということです。

 

日本では、部下は黙して従うということが美徳とされる傾向があり、対照的にオーストラリアでは、それはあまり美徳とされず、思っていることがあるなら(もちろんpoliteかつロジカルに)主張していくことが美徳とされます。

 

従って、

 

例え上司からの申し出だとしても、黙って隷従することなく、嫌なことは嫌だと(もちろん相手の心象を考慮しながら)説明する。

 

例えば、「まぁ、今日から毎日3時間残業すればいけるか・・・」という程度の仕事量を請け負った時、それを黙って受け入れるのではなく、現在の仕事量を説明した上で「残業すればできる」ということや、「この日はあまり残業したくない」ということを事前に伝えておくのが、大人としての役割です。

 

大抵の場合妥協案を提案する形で話がまとまりますが、例えば「あまり残業したくないからやらない!」ときっぱり言うのも可能です。

 

ただ、その場合も「politeかつロジカルに」が重要視されます。

 

例えば、先ほどのピアノレポートの場合だと

「私の雇用契約では、これらが内容となり、そこでサインしました。

その時点でのレポートに対して費やす時間は「月1時間程」と記録しています。

しかし、その時点と現状を見比べると

・商品群ごとのベスト・セル → 各商品のベスト・セル(10分)

・ディーラーにおける商品売上の推移の追記(60分)

・そして今回の為替レートの追記(10分)

となっており、当初と比べると月で1時間以上の業務増加となっています。

なんらかの形で別の業務を減らすか、待遇について考慮していただけると助かります。」

 

・・・このようにアカウンタビリティを果たす事が大人としての役割であり、上司への敬意を表すことになるのです。

 

 

 

まとめ

 

・上下関係は役割ベース

・役割ベースの上下関係を、人間関係と混同してはならない

・オーストラリアは正論を大切にする文化

・部下に対する扱い、心遣いは、上司にとり非常にシビアな評価事項となる

・なので、上司として部下に仕事を依頼するときは細心の注意を!

・部下としては、黙して上司に従うことは敬意ではない。アカウンタビリティ(主張)こそが敬意

 

いかがでしたでしょうか。

 

もしも、日本で社長に「ハーイ!ケンタロウ!」とか呼んでみたら、

ちょっとどうなるか想像もつきませんね。

 

まあ、私がいた会社では社長はアメリカ経験が長いし器も大きいので「ハーイ!ユージ!調子はどうだい?」と、めちゃめちゃ流暢な英語で返されそうですが。笑

 

それでは!


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