金曜日の定時間際、あなたは上司に書類の束を渡されました。
どうやら、これら資料の要旨をまとめたレポートを、週明け一番に本社に提出する必要があり、今日中にまとめあげて欲しいようです。

これからプライベートで楽しみだった予定があるのに・・・
あなたは、
「今日はこれからフットサルと飲み会があるんですよ。今日中にこの仕事やる必要あるんですか?そもそもなんでこのタイミングで振るんですか?っていうか、このボリュームだと休日出勤の可能性もありますよね・・・?」
と言いたい気持ちを抑えつつ、
「承知いたしました。」
と、ノープロブレム!OK!私におまかせください!といった表情をしながら、
しぶしぶ指示に従うことになります。
ではもしも、あなたが部下に残業を依頼する場合はどうでしょうか。
社会人たるもの、多かれ少なかれ残業するのは当然!と考え、十分な説明もせず、
「今日中にこれやっといて!」
で済ませてはいないでしょうか。
では、オーストラリアの定時や残業に対する考え方はどういったものでしょうか。
まず、私が経験した事例から紹介します。

まず、私の場合
降りかかってきた業務
とある水曜日の夜9時、本社から競合レポートの提出依頼がきました。
期限は来週の水曜日ということで、逆算すると残された時間は1週間。余裕があるとは言えませんが、期限内に提出可能な時間があると思えました。
ちなみに、このレポートの提出においては、オフィス内、各部署の皆からのデータ提出と、私のとりまとめという手順が必要でした。
ですので、なるべく早い段階でアナウンスと指示を投げなければいけなかったのですが。。。
ですが、水曜日その指示を本社から受け取ったときの私は、翌日木曜日の出張を控え、多忙を極めており、
その影響もってか、あろうことか、各所へのアナウンスが、金曜日午後4時にまで遅れてしまったのです。
レポート提出に要するプロセスから逆算すると、なんと、本日金曜日中に、各部署にて作業を完了してもらう必要があるではないですか。繰り返しますが、現在時刻・・・午後4時です。
私は頭を抱えてしまいました。
強引に、「本社の命令ですぐやらなくちゃいけないんだ!頼む!」ならば日本では通用するかもしれませんが、ここオーストラリアでは、通用しません。
「じゃあ、なんで本社はそんなに急いでいるのか?」という点について納得できる説明を求められることとなります。
まず、原因を調べ、考え、「応急処置」「恒久対策」に分けた
このような状況を迎え、実際に私がどのような行動をとったかというと、
最初に、素直に自分にも否がある点を謝罪しました。
そして、現状を伝え、まずはレポートを期限内に出さなくてはいけない旨を説明しました。(レポートが遅れる→オーストラリアの販社としての評価が下がる→発言権が下がる・・・等)
そして、応急処置として、残業をしてレポートを書いてもらうことにしました。
(ここが大切なのですが「これは今回だけ」という例外的措置として説明する必要があります。)
次に、私は本社がタイトなスケジュールでレポートを求めてきた理由に疑念を持ち、本社でどのようなやりとりがなされていたのか、確認しました。
するとやはり、本社担当にてちょっとしたトラブルがあり、そのスケジュール上のしわよせがこちらのタイトさに影響していたようです。
かなり大掛かりな依頼となると、通常は現地法人の社長を通して「正式な依頼」を本社担当者からすることになるのですが、これをきっちりやろうと思うと、依頼内容に漏れがあってはいけないし、メールの文言にも気を遣う。
ここに担当者の時間と労力が割かれるわけですが、今回は担当者にちょっとしたトラブルが重なり、メールを送るスケジュールが後倒しになってしまったようです。
この言質をとることができたので、私は本社に対して、オフィス横断的な作業を要するレポートを要求するときは、早い段階で個人的なPre-Warning(事前通告)をするよう求めました。(まあ、普段から会話がきっちりできていればこのような問題は起きないのですが・・・、本社の人とそういった関係を作るのも大切です。)
「恒久対応として、こういう内容のことを本社に伝えた」とオフィスの皆に伝えることで、今回の応急処置が本当に例外的なものである、と理解いただくことができました。
(そしてもちろん口だけではなく、今後似たような問題が再発しないよう努めるのは言うまでもありません。)
論理的な説得だけではなく、感情的な説得が必要
その後、残業に応じてくれた諸氏には、プライベートを犠牲にして協力してくれたことに関して、ささやかながらのランチをごちそうし、精一杯の謝辞を伝えました。
実はこういった騒動の後、迷惑をかけてしまったにもかかわらず、結果的に人間関係が以前より良くなりました。驚きです!

定時の概念
管理職には、今すすめておくべき仕事を正確に把握し、きちんとマネジメントをし、部下が定時内に仕事を遂行させるようにする義務があります。
言い換えれば、定時に部下を帰すようマネジメント(=定時内に仕事遂行)する事が彼らの仕事ですし、
もちろん部下に限らず誰しもが、自らのプライベートの時間を過ごす権利があります。
残業を依頼するということは、マネジメントミス、彼らのプライベートを過ごす権利の侵害、という2つのハードルを越えるに足る、合理的な理由がなくてはなりません。
では、残業を依頼せざるを得ない状況になってしまった場合、どのように立ち回るのが理想と言えるでしょうか。
突然の残業依頼といったイレギュラーなケースでの立ち振る舞いは、今後の仕事のまわり方に大きな影響を与えますので、注意が必要です。
急な残業を依頼する場合
「なぜ、急な残業をする必要があるか」論理的な説明が必要
「本社がそういっているから、とりあえずその通りに!」というのは避けるべき説明でしょう。
とにかく背景をしっかり説明して、何故それを今やらなければいけないのかを 理解してもらうことが重要です。
様々なオプションがあったうえで、この残業という選択が最善であることを論理的に示さなければいけません。
もし残業をしなかった場合、彼らに生じる不利益について説明する
今回のケースには含まれませんが、
今、残業という手段をとらないことによって生じる結果が、彼ら自身にも不利益をもたらす状況がある場合、それについて説明を尽くすことは、合理的な説明と同義になります。
「感謝の気持ちを表す」感情的なケアが必要
部下に残業をさせることを、当然の義務と考えるのではなく、残業をしてもらう、残業をしていただく。という意識を持つことが必要です。
残業するのが当然であるとの考えは、部下のプライベートを無視すると同じです。極端かもしれませんが、それは人間的に尊重していないことと一緒になります。
ですので、残業に応じてもらったことに対して、感謝を具体的な形をもって表すことが大切になります。
私だって、上司がランチをおごってくれて、感謝してくれたら、それはもうプライベートをつぶして残業をした甲斐があるというものです。

まとめ
定時内に部下を帰すのは管理職の仕事、それぞれのプライベートをリスペクトする意識を。
急な残業依頼には、合理的な説明をつくすこと。
合理的な説明に加えて、事後の感情的ケアが必須。
感謝は形に表すこと。
日本には「雨降って地固まる」という諺がありますが、実際にこのようなシチュエーションを経て、オフィスでの人間関係や信頼関係が以前より強固なものになった経験をしました。
もしも、十分な説明を尽くさず、感謝の気持ちも表さず・・・という対応をとった場合、結果は真逆になっていたかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
今回は、定時と残業依頼に関する考え方でした。
日本では始業時間は守りますが、「定時を守る」という意識はちょっと薄いのかもしれません。
残業が常態化し定時に帰ろうものなら、「他の皆に仕事を押し付けている」とみられるような風土が日本では散見されますが、オーストラリアではだいぶ事情は違うので、頭にとどめておきましょう!
ではまた!