最近お話を伺ったのですが、駐在英語は出張英語の延長線上にあるようなイメージを持たれやすいようです。
なので、出張にて使う英語に不自由がなければ、駐在員が使うような英語も「いけるだろう」と思ってしまいがちなのですが……(私もそうでした)。

私の場合、プライベートでも英語はよく使っていたので、全く問題ないとすら思っていました。かなりの思い上がりでしたね。笑
しかし、現地に赴任してはじめて、「デキル駐在員」としての英語のハードルの高さを思い知りました。
今回は、出張者の英語と、駐在の英語がどれほど違うのかを具体的にご紹介したいと思います。
出張者の英語
基本的に「1対1」もしくは「グループ対グループ」
出張者と現地スタッフ間の会議進行は、おおむね、
「1個の質問に対して1つの答えが返ってくる」
といったシンプルな議論が進行していくといったイメージ です。
また、「1対1」もしくは「グループ対グループ」というシンプルな議論であれば、会話の方向性・シナリオが非常に想定しやすく、会議の流れも追従しやすいです。
英語スキル的な面においても、現地スタッフは「対出張者仕様」に配慮します。
出張者が本社からやってきた人間であり、英語がそれほど得意では無いということをよく理解しているのです。
現地スタッフは、出張者に合わせたレベルに英語を調整しますので、「英語があまり・・・」でもそれほど問題ありません。
ですが、1対1のシンプルな構図でもコミュニケーションに障害を感じるようなら、海外出張の意義を考えつつ、英語を磨いていくことが必須です。
テーマがピンポイント
このような出張者訪問スケジュールは、おおよそ、2か月・半年・場合によっては1年前から固まっています。
現地滞在中のスケジュールは、ガントチャート等を使用して綿密に組まれています。
会議テーマに関してなら、例えば、
1日目:新商品に関する意見交換
2日目:最近リリースした商品に対する市場の反応について
3日目:他地域で非常に成功を収めた販売戦略事例を紹介
というように、各会議のポイントはクリアになっており、アジェンダもしっかりしています。
機動的に議論が多岐に広がっていくということはありません。
また、プレゼンに関していえば、
基本的に言いたいことや進む方向性は絶対ブレないように事前に作りこんであるはずです。
ですので、極端な話、想定問答集は作るものの、たとえ丸暗記でも、ミッションはとりあえず遂行できます。
出張者の立場
総じて、出張者の現地法人訪問は、「お上」による「視察員」という様相が強く、
情報交換の他、本社の方針に対する合意形成や質問の場とされる場合が多いようです。
その中で、もしも現地法人からネガティブな反応があれば、選択肢において持ち帰り・宿題にするというオプションが有力であり、その場で議論が尽くされるケースは、そう多いわけではありません。

駐在員の英語
「1対1・グループ対グループ」ではなく、皆参加の議論入り乱れる会議
一方、 駐在員が参加する現地法人の会議ですが、
出張者会議のケースのように、ともすればメールのやりとりのような、
一問一答的なシンプルな流れではなく、
皆が思い思いのことを、ライブ感を持って意見を出します。
例えるならば、ある意見の一側面について、割り込んだ意見が横から入り、そこから思わぬトピックに議論が派生したあと、また本筋に戻る……
といったように、シナリオを出張者会議の時のように予め想定しておくことは非常に困難です。
現地法人の会議では、一瞬の気の緩みをきっかけに、あっという間に会議の流れから取り残されてしまいます。
また、英語レベルについても、出張者会議とは質そのものが全く違います。
もちろん、「英語が苦手な人」むけへの配慮は一切ありません。
スピード・単語や表現・言い回し等、スタンダードなネイティブ表現を彼らの普段どおりに使います。
会議テーマが枝分かれしていく(ピンポイントではない)
前述のとおり、ダイナミックな動きを見せる会議ですが、
そのような会議テーマが枝分かれする、ブレる会議は比較的肯定的に捉えられています。
メールのやりとりのように直線的にシンプルな進行をする会議ではなく、アジェンダがある中でも、皆が入り乱れつつ、自由な発想をもって多岐にわたって意見を交換していきます。
根底には、自由で活発な意見の交換が、生産的な議論に繋がるという認識があるようですね。
また、そのようなダイナミックな会議に求められる英語的なスキルには、入り組んだ議論であっても、英語で対応・展開していく底力や、議論や交渉といった要素が欠かせません。
駐在員の立場は最悪の場合「厄介者」
ある意味、現地法人の「ネジを締めにきている」のが駐在員です。
なので、現地にとって、駐在員は「ただ単にニコニコ笑って座っていれば、それでok!」といったように思われる向きは、確かにあります。
例えば、現地法人がこれかの展開を検討している、本社方針に対して若干グレーなものの、高収益が見込まれる画期的なプロジェクトがあったとします。
しかし、その展開にあたっては、当プロジェクトが本社の意向に沿うかどうか確認し、オーサライズを得るというプロセスを経なければいけません。
となると、そのプロジェクトに関して、
「駐在員へ情報がなるべくダイレクトには流れないほうがいいな……でも、駐在員が合意形成に加わったという体裁は取りたいな……」
と考える現地スタッフも、もしかしていらっしゃるかもしれません。
たしかに、議論のなかにさりげなく紛れ込ませたり、あえて議論のまとめ段階で言及を避けていた様な印象を感じたトピックがあったような無かったような気がしますが…
駐在員の立場としては、そういったセンシティブな案件に対しても、フェアな回答をロジカルに、本人が納得するように説明する役割があります。
まとめ
好感触の海外出張を経験していても、駐在をその延長線上に見据え、
「んま、なんとかなるなる。だいじょうぶ!」
という風に見てしまうことは、なかなか危ういです。
それらは全く異質であるので……
ということで、しっかり準備しておくことをお勧めします!。

いかがでしたか。
そういえば、あちらでも、会議の「根回し」は意外と重要だったり、日本ほどではないにしろ「予定調和」がありました。それらの微妙なラインについても、今後お伝えしていきたいと思います。
ではまた!