いったい何のことかと思われるかもしれません。
詳しくは後述しますが、これは近年私の中で確信となりつつあります。
実践英語は「お勉強」というくくりでは、上達の芽を伸ばすにあたって、どうしても筋が悪いのです。
今回の切り口では、お勉強ではなく、スポーツ的なくくり・視点でアプローチしていく事を提案します。
今回は数あるスポーツのなかでも、私が好きなサッカーを題材に挙げつつ論を進めたいと思います。
スポーツはどうやって上達するか
スポーツのトレーニングはたまに「座学」が必要
たくさんの実践練習がスポーツのトレーニングでは物を言います。
しかし、かの宮本武蔵の「五輪の書」や、孫氏の兵法書を否定するものではありません。
やはり、「座学」。すなわち理論が無くてはならないのです。
ただ、強調しておきたいのは、ある程度の実践練習が無くては、理論は生きて来ないこと。
また同時に、理論メインに実践を磨くことは難しいということです。
練習は、全て目的のために
サッカーとなれば、その絶対目標は、「とにかく点数を入れる、ゴールを決める(=試合に勝つ)」です。
そのために必要な要素は、例えば
・走れる・ボールを止めれる、蹴れる
・ルックアップ、転がす、ドリブル、フェイント、ダイレクトパス
・スペースを見つけて走りこむ
・ボールをもっていない時の動き方(ディフェンスをひきつける)
・何が反則か把握(遵守精神は大事だが、状況により反則リスクを背負ったプレーはオプションになりうる)
といった要素です。
これらの要素を総合的に包括する練習が、最終的に「試合の勝利」へと収束します。
サッカーでは、ドリブルのためのドリブル練習や、走れるための走り込みをするわけではありません。
決して練習のための練習をするワケではなく、その先の「勝利」達成という目的にむけての練習になります。
実践?実戦?・・・実戦のワナ
さてここで注意しなければいけないのは、実践が大事だから、実戦練習を積めばOKかというと、それもまた違うところです。
プロサッカーの試合では、
「1人の選手がボールに触れるている時間の平均は約1分程」
と言われています。
(スポーツ科学者のCarling, C. がフランス1部リーグを対象として調査)
もし、体力の限界に挑戦し、週5回試合に参加したとします。
それでも1か月で、たったの20分ちょっとしかボールに触っていないことになりますね。これで上達するのは無理がありますね。。
もちろん、実戦慣れや、カン、目標(ゴールを決める)の明確な意識など、得られる成果を全否定するわけではありません。
重要なのは、それぞれの練習にそれぞれの側面がある。
つまり、上達のためには、練習方法を整理し、戦略的なアプローチをとっていくことが必要なのです。
英語を上達させる方法は、スポーツと同様に捉えるべきだという理由
スポーツで使われる技能は二種類に分けられる
・クローズドスキル
外的な状況に影響されない技術。対戦相手がおらず、安定した状況化での技術。陸上競技全般、体操、ダーツ、サッカーのリフティングやテニスの壁打ちなど。「己との闘い」のイメージですね。
・オープンスキル
外的な状況に影響される技術。対戦相手がおり、刻々と変化する状況での技術。状況判断、意志決定等を含み、応用的である。また、クローズドスキルを内包する(技術+判断力)。
例として、サッカー、テニス、バスケットボール、剣道など。英会話はこちらに属します。
サッカーも実践英語も、目的達成に必要とされる能力は「オープンスキル」
まず、それぞれの目的を整理します。
・サッカーの目的は「(観客がいる中で、)相手のチームと試合をし、勝つ」
・実践英語の目的は「英語をビジネスのフィールドで使って活躍する」
上記2つに共通の方向性を見出すことに違和感がなければ、以下のように言って差し支えないと思います。
「サッカーも実践英語も、それぞれ目標達成にオープンスキルが必要となり、ともにプレイヤーとしての資質を高ておく必要がある。」
右脳とマッスルメモリーが、オープンスキル習得のカギ
実践英語はオープンスキルなので、練習にあたっては、いわゆるクローズドスキルと区別した考えが必要となります。
オープンとクローズを混同してしまうと、ドはまりしてしまいます!(私がそうでした!)
経験上、実践英語習得に関して困難さを抱える方には一つの傾向があります。それは、クローズドスキル(理論と知識)だけを習得して、「練習」と思いこんでしまっているということです。
しかも、そのクローズドスキル(例えば走り方のフォーム)が間違っていたりすると、目も当てられない結果に。
そして、クローズドスキルの高等テクニックに魅せられて、練習の一つ一つをモノにしないまま、次々と他の練習に進めてしまったら、実戦で引き出せない知識ばかりどんどん積み重なっていきます。
もちろんそんな状態で実戦(試合)に行ってもアワワとあわてふためくばかりです。
例えば、「ここフェイントして、相手がバランスを崩したら、ボールを股抜きして・・・」などと頭で文章化しながらプレイする選手はいないでしょう。
これらを理論と知識をオープンスキルに転換させていくには、
実践を意識した正しいクローズドスキルの練習を繰り返し行い、「無意識」のレベルで出るぐらい、体に覚えさせることが非常に有効です。
事実、言語はマッスルメモリーに近いところがあります。
それぞれ練習が細分化でき、成果が測定可能
さて、これらの「スキルの測定」に関してですが、特にクローズドスキルに関しては測定が簡単です。サッカーならリフティングの回数やドリブルのスピード、持久力等の体力を個別に測定することができます。
そして、英語で言う「測定要素」を抜き出したとします。
それは、馴染みがある、語彙力、文法力、リーディング、ライティング、リスニング・・・などです。
下記はあくまでイメージですが、以下のようなイメージです。
英語 | サッカー |
・文法 | ・体幹 |
・語彙力 | ・持久力・体力 |
・イディオム | ・バランス感覚 |
・リスニング | ・ポジショニング |
・スピーキング | ・ドリブル |
・ライティング | ・リフティング |
・リーディング | ・理論+正確なパス |
これらは細分化させたうえで、個別の練習が可能です。
特に左、英語のほうは、TOEIC向けの参考書でカテゴリごとの対策がされているのを良く見かけますので、親しみがあると思います。
ただしこれは
「測定するための切り口」
であって、
「上達するための切り口ではない」
ことをご注意ください。
もちろん、これらを全てきちっとやれば、それなりに能力は伸びます。(サッカーをされる方だと想像しやすいかもしれません。これらがもし完璧にできれば、サッカーはある程度上手ですよね?)
しかし、それは本当に効率が良いのか?ということを突き詰めて考えるのが大切です。
ここで、実例をもとにもう一歩掘り下げてみたいと思います。
「測定値」の切り口は上達に結びつかない、というのがサッカーだと良く分かる
サッカーの場合
・プロは大は小を兼ねる
前掲した細分化表の全てができても、サッカーが上手いとは限りません。すなわち、イコールではないのです。前述したとおり、全て完璧にこなせたら「下手ではない」ことは保証されています。
しかし、それはイコールでサッカーが上手か・・・というと、そうではありません。
逆に、プロのサッカー選手は、これらの要素の得点は非常に高いでしょう。
英語でも同様です。本物の実力があれば、TOEICは試験対策を少ししておけば、点数は取れます。が、点数を目的に勉強していても、実践が得意になる保証は一切ありません。
・では、上達するための切り口は・・・?
では、もし仮にスキルゼロの素人が、それなりにサッカーをうまくなろうと思ったら何をするべきかと言うと、
・まず、走れるようになる
・ボールを止める練習
・ボールに触れながらの体のバランス感覚
・パスもらう前にルックアップする練習
・フィードバック付きの1対1練習
・試合を経験する
といった、実践を意識したクローズドスキルの練習を行います。
間違っても、
・華麗なボレーシュート
・流麗なフェイント
だけをやって上達させようとは思いませんよね?
(もちろん、やろうとすることは大切だと思いますが)
英語にあてはめると、いかに見当違いなことをしている人が多いことか!
・TOEICで高得点を取得していても、実践英語ができるわけではない
さて、それでは本題の英語です。これもサッカーと同じく、前掲の細分化表の全てができても、実践英語ができるわけではありません。
しかし、実践的にネイティブレベルの英語を使いこなしている人は、細分化表全ての要素で高得点をマークできます。
(もっと言えば、実践英語ができていても、TOEICが苦手な人がいます。これは「草サッカーに慣れている人」という感覚です。あまり体力やスピードはないけど、なぜかうまい・・・みたいな人です。素人から見れば上手ですが、プロの試合では太刀打ちできません。この人達も、さらなる上達の余地がたくさんあります。)
TOEICで900点以上とっていても、会話がまるでダメなんて方、結構よく聞く気がしませんか・・・?
英語だとなぜか、「単語覚える、文法覚える=英語できるようになるかも」と思ってしまう方が多いのです。
勘違いのあるある、見当違いな練習方法の一例は、このようなものです。
・ちょっとおしゃれなフレーズの暗記
・小難しい英単語を一生懸命知識として積み重ねる(思い出すのには1秒以上かかる)
・NHKのビジネス英会話上級編のフレーズ暗記
これらにより実践英語はある程度上達するかもしれませんが、効率は非常に悪いと言わざるを得ません。
それはまるで、華麗なボレーシュートや、流麗なフェイントだけをひたすら練習して、サッカーを上達させようとしているようなものです。
それでは、上達に結びつく英語の切り口とはどのようなものでしょうか?
上達に結びつく英語の切り口
先ほど、上達をするためには、実践を意識した正しいクローズドスキルの練習を繰り返し行い、「無意識」のレベルで出るぐらい、体に覚えさせることが非常に有効だというお話を紹介いたしましたが、カテゴリーは大きく3つに分けて説明することができます。それは、発想力・瞬発力・表現力です。
発想力
・言い換える力
・相手に伝える力
・英語のコンセプトを理解
言いたい内容が頭の中には日本語で浮かび、それを訳そうとしても上手くいかず、歯がゆい経験をされた覚えはありませんか?
難解な日本語→英語ではなく、シンプルでも良いので英語で伝えようとする力が必要なのです。
シンプルでも相手に確実に伝えるためには、ルールに沿って伝えること・・・すなわち、文法というルールを活用します。
なかでも、【伝えるための文法力】という面からのアプローチが必要です。
発想力ではココを鍛えます。
瞬発力
・聞いた単語をイメージする力
・言いたい単語をすぐ出する力
・瞬時に応答する力
いわゆるビジネス実戦上の英会話で、「この単語、なんて意味だっけ?」と1秒でも入ったら、途端に会話の流れをフォローしていくのが難しくなります。
なぜなら、その単語思い出している間に会話はどんどん進んでしまうので、すぐに思い出せない単語は英会話上無意味です。
もちろん、知識・テスト・メール等の書き言葉ではセーフです。
しかし会話では、瞬間的に えーと・・・が1秒でもあったらアウトなのです。
単語や文と、心の中のイメージ・意味を直結させる力。
瞬発力ではココを鍛えます。
表現力
・発音(単語・リンキング)
・イントネーション
・ジェスチャー・表情
これらは実は、評価にあたっての測定基準がはっきりと確立されているワケでもないのです。
発音については、一個一個自分の発音をチェックしてもらうような発音の特訓を積んだ人は少ないですし、学校のテストで発音を数値化して評価されることもなかったと思います。
例えば、「君のRightは 80点 でも、Lightは 100点 だね!」といったような。
ジェスチャー・表情に点数を付けることをしませんし、イントネーションに至っては、テストで減点でもされようものなら差別で訴えられかねられません。
そして同時に、これらは、一般的な日本人が筋道だてたトレーニングを受けにくいところでもあります。
例文をリスニング教材で聞いてなんとなく雰囲気は分かりますが、あくまでも、「なんとなく」であって、自己流で系統立てた筋道を見つけ出すのには膨大な時間がかかります。
とは言っても、ただひたすら自分で頑張る方法もあります。
発音やイントネーション、表情・ジェスチャー。
表現力ではココを鍛えます!
さて、これら3つの要素は、いずれもあまり学校習うようなモノではありません。
しかし英語をコミュニケーションツールとしてとらえるときは、表現力は必要な要素なのです。
以上、この3つが上達するための切り口です。
この3要素に関しては、メール講座にて詳細な内容が紹介してありますので、ご興味ある方は是非ご登録ください。
まとめ
・実践英語の上達は、「お勉強」ではなく「スポーツ」的アプローチを
・実践英語は、オープンスキルだと意識し、適切な練習を
・測定、点数化できない所に、オープンスキルを伸ばす秘訣がある
いかがでしたでしょうか。
中高の英語授業を思い出してみると、
・机に向かって学習(8割)
・人を相手に英語でコミュニケーションをとるスタイルの学習(2割)
だったように思います。
座学的な勉強をメインにしてしまうと、私たちの英語脳は知識と理論に偏ってしまいがちなのかもしれませんね。
ではまた!